田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

形式主義は悪か?

 昔、立候補用件である「住所」の概念を聞きに、選挙管理委員会へ行ったことがあった。
 何が「住所」なのかと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/住所



 実際に生活しているところが住所だとするならば、1日の大半を過ごしている場所と寝起きだけをしている場所とが必ずしも一致しない人だっているだろう。
 睡眠時間が8時間だとしても、その8時間以外を別の場所で過ごしていたとすれば、住所の概念はどこへ求めたら良いのだろうか。



 あまりにも忙しすぎて何日も家へ帰らないという医師の話を聞いたことがある。彼は寝起きを病院の中で行うという。家へ帰るのは3日に1回だという。では、この医師の住所は病院なのだろうか。



 政治家だって同じだ。住所があっても、その住所で毎日いつも寝起きをしているとは限らない。私のように宿泊を伴う旅行好きな議員は、一年365日、毎日自宅で寝起きをしているわけではない。
 もっと言えば、別の場所にもう一つの家があって、そこで寝起きしているので、自宅には帰らないという人だっているかもしれない。
 国会議員であれば、日本国のどこかにいれば問題はない。
 都議会議員であれば、東京都のどこかにいれば問題は無い。
 しかし、江戸川区議会議員であれば、江戸川区内に住所がないと、失職してしまう。都議会議員であれば都内に、国会議員であれば、国内に住所が無ければ失職してしまう。
 地方議員は、それだけ住所の概念を狭く持たなければならず、それだけ厳しい立場に置かれている。



 この様に様々な問題があるとはいえ、選挙管理委員会の見解はあくまでも形式主義だ。
 住民票が、江戸川区内にあれば、江戸川区議会議員選挙に立候補できるというものだった。
実態がどうであれ、形式が整っていれば、立候補は受け付けるというのだ。



 実態と形式とのギャップがあるとすれば、それは道義的な問題として、法的な問題とは切り離して考えるべきとの立場を選挙管理委員会は執っているのだろう。



 この様なことを考えながら、教育の問題について相談を受けたことがある。
 学区制度の問題だ。○○中学校へ子どもを通わせたいから、△△へ引っ越します。
そうすれば、確実に○○中学校へ進学できますよね?
 そんな問い合わせもある。
 現実の親たちは、そこまで子どもたちに対して、真剣であり、切実であり、自分たちの生活を犠牲にしてまでも子ども中心に考えて生活をしようと試みている人たちだっている。



 自分たちが行きたい学校に行きたい。それが実現できれば理想だし、その理想を少しでも叶えてあげたいと私は思う。
 しかしそこには、特定の学校が過熱的な人気を持ってしまい、誰も彼もその学区へ引っ越していけば、当然、学校の許容を上回る生徒が集まってしまうかもしれないという不安定要素を抱えることにもなる。
 それとて、実体を伴って引っ越しをされて、その引っ越しをされた場所の学区を対象とする中学校に行くのであれば問題は少なかろう。
 一番問題なのは、実体を伴った引っ越しではなく、住民票だけを該当する学区内に変更したりして、人気校に入学しようとする試みである。または実態として、学区内へ引っ越しをして、人気校に入学した途端、それを既得権益として残しつつ、元の住所へと更に引っ越して学区外へと去る場合もあるだろう。
 形式主義が悪いとして実態調査をしたところで、人間の欲望が収まることない。狸と狐の化かし合い。イタチごっこのようになることは目に見えている。教育委員会は、取締機関ではないので、実態を調査して対象者を罰するようなことはほどほどにすべきかと。



 よって、私は問題が拡大し、矛盾が大きくなることも承知で、一人一人の区民の欲求に答えるべく、○○中学校へ行きたいという親御さんと子どもたちの希望をまず優先して叶えてあげたいと思う。
 形式主義だっていいじゃないか。
 本来ならば、形式主義を問題視するのではなく、住所によって行きたい学校へ行けないような制度にこそ、問題の根本があるのではなかろうか。



 本来ならば、制度改正の可能性を優先して追求すべきところだが、生徒さんたちは、今、1分1秒をリアルに生きている。人間は皆、1分1秒をリアルに生きている。制度が改善されてから対応しますとなれば、中学校生活の3年間ぐらいあっという間に過ぎ去ってしまう。
 とりあえず今できる範囲の中で、できることをする。不充分かも知れないけれども、それによって救われる人たちだってたくさんいるはずだ。



 未来に対して、大いなる矛盾を残すことになるかも知れない。
 しかし、それを恐れるばかりに、目の前にいる人の不幸に目をつぶっていることは、私はできない。



 だからかもしれない。区議会議員という職業がある意味とは。

2009年02月19日