中小企業は世襲が一番
朝の倫理法人会にて中野里孝正氏(築地玉寿司会長)のお話を聞いた。
中小企業の社長を経験された立場から言うと、中小企業は世襲が一番だという。
つまり大企業にしろ、中小企業にしろ、後継者育成が重要とのこと。中小企業は、会社組織であっても、個人の信用で銀行が金を貸すという。どんなに優秀な従業員であっても、会社が傾きはじめると逃げ出す者も多い。
しかし、世襲であれば、逃げ出すことはできない。最悪倒産のような事態にでもなれば、それまで苦楽を共にした家族の財産を全てはき出しても対応しなければならない。運命共同体とも言える責任の大きさからすれば、事業の継続が責任の継続となる世襲が一番だという。
「大企業や政治の世界では、世襲は良くないとは思いますけど」
そう補足を加えた上での会長なりの持論だった。
今の政界では世襲に対する批判が強い。私も世襲が良いか悪いかと聞かれれば、良くはないだろうと答える。しかし、世間で言われるほど、声高に訴える立場にないとの思いから、主張してこなかっただけだった。
このような価値観の中にあっての、限定的な「世襲擁護論」は新鮮で面白かった。
私はこの話を聞いてふと思った。
そうなのか。政界で世襲が流行るのは、国会議員と言えども、それが中小企業だったからなのだと。国会議員一人にたいして、公設秘書がたった3名。地方議員については、公設秘書は0。
共に働くスタッフが数がこれだけでは、中小企業と考えても差し障りないでしょう。
そもそも野球は9人が一つのチームになって行うスポーツです。サッカーならば11人。チームプレーが必要な球技のように、政治の世界も議員を中心としたチームプレーとして運営されるべき仕事だと私は思います。どんなに素晴らしい議員であっても、9人のポジションを一人で守ることはできないように、政治家に良い仕事をして欲しいの望むのであれば、それなりのスタッフをつけないとダメです。
政治にお金を使わずに、政治に良い結果を求めることはできません。
このように、政界における世襲が良くないとするならば、少なくとも国会議員における世襲が良くないとするならば、国会議員をいかに大企業化するかを考えることが、先ではないかと思います。その結果として、世襲が必要なくなり、世襲が防止されるのではないでしょうか。
そのために、日本の政治は何をすべきか。
①善し悪しはともかく小選挙区制が主体の選挙制度である以上、日本の二大政党は、党内民主主義をより徹底して確立しなければなりません。できるならば、狭い一地域だけで候補者を選ぶのではなく、国政選挙ならばなおさら、より広い選挙区を想定することが必要です。小選挙区制では難しい案でしょうが、そのようなことになれば、小泉元首相の後継を次男が継ぐことも難しくなるでしょう。法律で一律に禁止するよりも先に、まず各政党は世襲を禁止する党内ルールを確立することから始めたらどうでしょうか。
②国会議員を支えるスタッフを増やすべきです。現状では、国会議員と言えども中小企業なのです。今でも国会議員の活動に家族の協力が不可欠です。つまり家族という私的ボランティアによって、国事が支えられているというのが、日本の政界における問題点です。家族の支えがなくとも充分に国会議員としての活動ができるように秘書のようなスタッフと家族を名実共に分離して考えるべきでしょう。
③情報公開を徹底する。公的な場での発言、私的なメッセージ、お金の出入りから、分単位による公的なスケジュールまで、できうる限りの情報を公開し、有権者に知ってもらう。議員一人ではとても対応しきれないだろうから、それはスタッフが行う。そうすることで、国会議員が家族のボランティアなくしても存立しているという現状を公表する。
法律によって、一律の世襲禁止も構いませんが、形式的に世襲を禁止するのではなく、なぜ世襲が必要だったのか、どうすれば世襲が必要ではなくなるのかという観点から、政界の世襲を考え、それの自然解消を促す制度改正もまた同時に必要なのではないかと思います。
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2009年05月16日