無料化論を潰して、高速道路は作られる
民主党政権時代、他の政党はこぞって高速道路の無料化に反対した。政党だけで無く、JRや船舶など、競合他業種もこぞって無料化論に反対した。
また、一見するとメリットがありそうなバス会社でさえ、マイカーが増えると高速バスを使わなくなるとの理由で反対した。
反対、反対、反対の大合唱で、高速道路の無料化は、袋だたきに遭うように潰され、現在に至っている。
しかし、高速道路の無料化が下火になり、民主党から政権が自民党になって、なにが起こったのか。
壮大な無駄遣いとも言うべき「使われない高速道路」の建設復活である。自民党は、景気回復の手段として、未だに公共事業を推し進めようとしている。
民主党が政権を取った時に散々批判されたような「コンクリートから人へ」のスローガンよろしく、無駄な公共事業は、新たなる復活をしようとしている。
現在の高速道路の総延長距離は、9,855㎞。
目標とする高速道路の総延長は、14,000㎞。
現在、高速道路の恩恵を受けられる人、95%。
14,000㎞の高速道路完成時に恩恵を受けられる人、98%。
現在、高速道路の面積カバー率、77%
14,000㎞の高速道路完成時の面積カバー率、94%。
これとは別に以下のような試算もある。
2050年、日本の人口9,500万人、40%が65歳以上。
さて、このような数字を眼前に冷静な判断した場合、果たしてこれからも、「地方のエゴを満足させる」だけの高速道路を、作り続けることに何のメリットがあるのだろうか。
メリットがあるのは、作ることが最大の目的である土建業者
であり、土建業者から支持されている政治団体に他ならない。
現在も公務員批判は激しいものがある。
私は何も公務員の弁護士ではないし、むしろ厳しい立場を自負しているが、公正な目を持って語れば、この国の財政状況を悪くしたのは、一義的には公務員の存在ではない。
この国をここまで借金体制にしてしまった犯人は、公共事業そのものにあると言えよう。
民主党政権時に、国の借金が増えたのではなく、自民党政権時代から、延々と国の借金は増え続けてきたのであって、その元凶は、公共事業だと、かつて民主党が批判し続けてきたが、正にその通りなのだ。それを知ってか知らずか、自民党に政権が戻った途端に、この壮大な無駄と言える高速道路建設が、復活しようとしている。
はたしてこれで良いのだろうか。
高速道路の無料化論の時「これは壮大なばらまきだ」と批判した政党がいくつもあった。しかし、これはばらまきの認識が違う。ばらまきとは、高速道路の建設時に行われているのであって、それをより多くの人たちに使ってもらおうとする無料化は、ばらまきではなく、有効利用だったのだ。
つまり高速道路にかかる借金は、高速道路を有料化にしようが、無料化にしようが、関係なく存在する。
「有料化の方が、早く借金を返せるでは無いか」
そう思う人も多いだろうが、当然、有料化を続ければ、交通量は減る。交通量が減れば、通行収入は減る。
今正に、東京湾横断道路アクアラインが、現状のまま800円にするのか、それとも平成26年4月1日以降は、3,000円に戻すのかで、議論が揺れている。
当然、3,000円に戻れば、交通量はぐっと減るだろう。はたしてそれで目標とする通行料金は確保できるのだろうか。
高速道路を使うというメリットがあるからこそ、通行料金を支払って当然だという「受益者負担」を肯定する論理は根強い。
しかし、これから作られる高速道路は、どう考えても人がほとんど住んでいないような地域ばかりである、その高速道路の建設費は、その道路をほとんど利用しない、都市住民が支払った高速道路の通行料金によって支払われる。つまり料金プール制の考え方だ。
この料金プール制の考え方こそ、実は、受益者負担を無視している。
このように、高速道路は、都合のいい時は受益者負担と言い、都合が悪くなると、料金プール制を持ち出して、受益者負担を否定する。
我々都市住民は、とっくの昔に、償還の終わった東名高速道路や京葉道路の料金を相変わらず延々と支払い続けている。
高速道路の有料化とは、料金を支払っている人たちが期待するような、高速道路の償還を進めるモノではなく、ほどんど使われない高速道路を延々と作り続けていくための制度。これは本来の目的を逸脱し、作ることが自己目的化した公共事業そのものではないか。
私はこれからも無料化を主張します。無料化に賛成だろうが、反対だろうが、人の意見は様々でしょうが、赤字財政であっても、高速道路が延々と作られていくことに、もっと多くの方々が敏感になっていただきたいと思います。
高速道路の建設費の負担は、確実に私たちの生活費に影響を与えていくのです。
2013年08月06日