田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

「国土の均衡ある発展」が日本をダメにした

 日本の高速道路行政や空港行政を見ると、日本を全体的に発展させようとした「悪しき平等主義」が、今の日本をダメにしてしまったと言える。

 高速道路を見よ。首都圏および関西圏と同様の生活をと望む地方に採算を度外視した高速道路建設によって、借金は一時40兆円にもふくれ上がった。
 それと同様なことが、空港行政にも言える。静岡空港は国内98番目の空港になる。(ちなみに99番目は茨城空港)
 この空港には総事業費1900億円もの税金が使われてきた。内訳は県や市町村が1655億円。残り245億円を国庫助成で補っている。
 静岡県が1995年の最初に発表した利用者予測は、178万人だった。
 2000年の予測では121万人になった。
 2005年の予測では106万人になった。
 しかし、現状で就航が予定されている航空会社の乗客定員を単純合計しても一日2518人にしかならない。1年365日フル稼働したとしても、92万人弱である。こんな単純計算によって利用者数を導いても、年間利用者が106万人になることはあり得ない。ましてや、この計算はどの飛行機にも客が満員であると仮定しての話である。これまたあり得ない話である。
 通常、利用状況に置ける損益分岐点は60%とされている。92万人の60%は、約55万人である。これも赤字にならないギリギリの需要予測であって、飛ばしてみなければ赤字になるかならないかなどはわからず、60%という利用率についても期待値でしかない。

 このように役所はいい加減に水増しした利用者予測を立て、空港建設をまずは実行させてしまう。その後、現実的な数字へと下方修正するのだがそれでも現実とはかけ離れた最大限の期待値を現実のものと思い込むことで、建設完成から開業へと導こうとしてきた。
 これまさに、空港建設そのものを目的化して、健全経営を二の次三の次に考えているとしか思えない発想である。日本における税金の無駄遣いの実例が、この静岡空港建設の縮図から見えてくるのである。
 今回はたまたま開業間もない静岡空港を例にしたが、日本にはこのような空港は他にもたくさんある。何せ静岡空港で98番目なのだから、90近い地方の小さな空港が、どれだけ税金を食い散らかしてきたのか、想像に難くない。

 日本は日本国内しか見ていない。少しでも東京のような生活を望む地方の人々の素朴で単純な願望は理解するが、その夢を現実化したなれの果てが、今の日本の高速道路と地方空港なのである。
 それによって、本来ならば一番需要がある羽田と成田の空港整備が遅れ、日本はアジアの中でも空港後進国になってしまったのである。

 韓国には3750メートル2本と4000メートルの滑走路を持つインチョン国際空港がある。計画では更に1本、4000メートルの滑走路を造るという。
 シンガポールには4000メートル滑走路を2本持つチャンギ空港がある。
 タイには4000メートルと3700メートル滑走路を持つスワンナプーム国際空港がある。計画ではあと2本の滑走路を造るという。
 中国には4000メートルと3800メートル滑走路を持つ浦東(ぷどん)国際空港が上海にある。計画ではあと2本の40000メートル滑走路を造るという。
 マレーシアには4000メートル滑走路を2本持つクアラルンプール国際空港がある。計画ではあと3本の滑走路を造るという。(ちなみにこの空港建設には黒川紀章が携わった)
 成田空港は、4000メートルと2180メートルの2本の滑走路を持つ。計画では、2180メートルの滑走路が2500メートルに延長されるという。

 日本の空港が、アジアの各空港と比べて使えない空港であることは、このような諸条件の違いから言っても明々白々である。
 今すぐにでも、赤字空港は廃港とし、JALは破綻させ、限られた税金を、羽田空港の拡張と24時間運営に投入し、世界競争の中で生き残っていかなければならないのである。

 「地方切り捨て」との批判は大いに結構。地方も地方が沈む前に、首都東京が、日本そのものが沈んでいることを再確認して欲しい。これまで大いに日本の競争力の脚を引っ張り続けてきた、地方偏重の国土経営から脱却しなければならない。少なくとも空港行政に関しては、日本全体が一丸となって、世界の中で生き残れる挙国一致体制を作っていかなければならないのである。

(参考文献:森功「血税空港」幻冬舎新書)

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2009年11月22日