田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

t_ken

日刊田中けん

地方空港廃港の嵐が吹く前兆

茨城空港開港 早くも責任転嫁の兆し
2010年03月11日 asahi.comより


 11日に開港する茨城空港で、早くも政府と県が責任を押し付け合う兆しを見せている。県は10日、空港の利用予測を公表し、1999年に政府がはじいた80万7千人の2割にとどまる見解を示した。一方、前原誠司国土交通相は5日の閣議後会見で、「作った以上は茨城県が自助努力を」と、県の責任を強調。開港記念式には、他の空港に比べ下位の幹部しか出席させなかったことも分かり、議会には前原氏に真意をただすよう求める声も上がった。(中村真理)
 10日の県議会総務企画委員会。田所嘉徳県議(自民)は前原氏の「自助努力」発言に対し、「大臣は県営空港と勘違いしているのではないか」と口火を切った。前原氏は会見で「開港は前政権が決めたこと」「鳩山政権はこれ以上空港はつくらないし、航空会社に路線を無理強いしない」とも述べていた。
 茨城空港の管理・運営は、県開発公社が空港ターミナルビルを受け持ち、管制塔や滑走路などの本体は国が責任を負うことになっている。田所氏の指摘を受け、県側も「憤りを感じる」とし、対応を検討する考えを示した。
 互いが責任を回避しようとするのは、茨城空港の将来性が明るくないためだ。県は同委員会で、現在運航が決まっている韓国アシアナ航空のソウル便は年7万7千人、スカイマークの神戸便は年9万人との試算を打ち出した。99年の国の予測の2割しかなく、これではビルも本体も赤字になるのは明らかだ。
 国交省は9日、空港建設の判断基準とされる需要予測のうち、達成している空港は8カ所のみと発表しており、田所氏は「国が調査して作った空港なのに、茨城も例に漏れず就航がうまくいっていない。誰が責任と言えば国ではないのか」と続けた。
 さらに、井手義弘県議(公明)は、地方空港の開港式における国交省側の出席者を質問。県の答弁で、03年の能登空港以来、4空港の開港式には同省の大臣や政務官が列席していたことが分かった。7日にあった茨城空港の開港式で同省から出席したのは、航空局長だった。井手氏は「(民主党は)政治主導と言っておいて、政務官以上が来ていないではないか」と憤った。
 委員会終了後、県の福田敬士企画部長は朝日新聞の取材に「『国営』だが、我々も望んだ空港ではあり、一緒に作ってきた」と述べ、困惑した様子だった。
 ただ、茨城空港の建設については、県が地域活性化策として推進し、国に要望を繰り返してきた。その際、「就航対策は県が責任を持つ」と発言してきた経緯もある。橋本昌知事が「国営」を強調するようになったのは、昨夏の知事選前だ。
-------------------------------
 事業が失敗したときに誰が責任を取るのか。その醜い「犯人捜し」が始まった茨城空港である。同様に最近開港した静岡空港も赤字である。それでも茨城県の橋本昌知事は「国管理空港なので、県負担は70億円程度に留まるが、昨年県営空港を開港した静岡県の負担は245億円に上回る」と、他県よりもまだマシだと強調する。


 もう既にこの様な事例にもあるように、「なぜ地方分権が必要なのか」の問いは出ている。地方分権を徹底しない限り、地方はどこまでも国の税金をあてにして、自立した事業経営をしようとはしなくなる。つまりどんな事業であっても、拡大運営すれば、拡大運営するほど、国から金を引っ張ってこられるのだから、地元からすれば「無駄遣い多いに結構」となるわけだ。これでは国の借金はいつまで経っても減りはしない。
 今後は、厳しいようだが、地方空港の運営に関して、国は一切面倒を見ず、地方の自主性に任せる方向性になっていくことだろう。赤字だから潰すというのも一つの案。赤字でも地方がそれを望むのであれば、地方の財布を使って運営するというのも一つの案。または知恵を絞って、地方の空港を何とか黒字経営に向けて努力するのも一つの案だ。


 地方経済の活性化を図る目的で建設されたはずの空港が、今では国や自治体財政の負担となっている。なぜこの様になってしまったかと言えば、空港整備特別会計が、高速道路と同様に、全国を一体として考えるプール制を採用して運営されているからである。それよって、需要が少ない小さな町にも空港を作ることはできたが、明らかに需要を読み違えて「空港建設ありき」で話を進めてしまったため、一つ一つの空港の赤字の実態が明らかにされずに済んできた。
 これが無責任体制を生み出し、赤字空港であっても、国の税金を食い物にしながら運営し続けられたからくりである。
 これからは、個別の収支がわかるように、国や自治体の責任を明確化させ、赤字続きの空港は潰してしまう決断をしなければならない。再三言うように、離島の場合は、赤字運営であっても、空港の存在が島民にとっての生命線になることもあるので、福祉的事業という位置づけで大目に見ることはできるが、北海道・本州・四国・九州にある赤字空港は、即廃港にするぐらいの政治決断をしなければならない。


 東京を中心とした首都圏に住む人たちの貴重な税金が、地方に住む人たちの「オラが町にも空港を」という見栄によって、食い物にされているという実態をもっと真摯に受け止めなければならない。


2010年03月18日