公務員の仕事を減らす目的で無料化する
月々の子ども手当ては、26000円の支給となる。
月々の給食費は、概算、小学生が4000円、中学生が5000円となる。
給食費の未納が社会的な問題になる現状にあたって、北海道教育委員会では以下のような報告書まで作っている。
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/kak/tyousakennkyuhoukokusyo.htm
これはこれで涙ぐましい努力ではあるが、私の関心はここにない。
子ども手当てから、給食費を天引きして支給してはどうかという案もある。面白い発想だとは思うが、私の関心はこれとも違う。
私の関心は、どうしたら給食費を払わなくても、給食を食べられる学校を作るかだ。これだけを聞くと、「大きな政府」による教育費の充実を主張しているのかと思われるかも知れないが、全く逆だ。むしろいかに効率が良く「小さな政府」に近づけるかを考えた上でのアイディアなのだから。
「対策」と言えば、さも仕事をしているかのような雰囲気をかもし出しているが、私の発想は、「対策する必要が無い社会」の構築である。対策しなくても問題が発生しなければいい。
上記の北海道教育委員会の報告書には、未納問題を克服するために、以下のような提案がなされている。
課題
学校教育の意義や役割、納入の重要性などについて、保護者の理解を得る取組を一層推進する必要がある。
就学援助制度などの学校教育費援助制度について、保護者への周知を図る取組を一層推進する必要がある。
地域や学校の実情に応じて、学校給食費の徴収体制や徴収方法を工夫する必要がある。
未納状況の把握につとめるとともに、実態に応じて、学校給食費を督促する体制や方法を工夫する必要がある。
未納状況の把握に努めるとともに、法的措置について調査研究を深め、具体的な方策を明らかにする必要がある。
これら一つ一つの課題を誠実に実行しようとすれば、どれだけの経費が必要なのか試算したことがあるのだろうか。とてつもない時間と経費と労力が必要となることは間違い無い。それにこの様な対策によって得られる未納分の給食費は、はたしてどれだけの額になるのだろうか。不等式によって説明しよう。
対策にかかる経費 > 対策によって得られる未納分の給食費
こうなることは、目に見えて明らかだ。実際、本当にこうなってしまえば、本末転倒ではないだろうか。もちろん、行政は財政的な負担を度外視してでも対応しなければならない仕事が多々ある。いくら未納分の対策経費がかかろうとも、未納を放置しておくと、その分だけ未納額が膨らみ、問題が更に大きくなる可能性がある。不公平感が社会に満ちて、嘘や不誠実さが得をする社会になってしまう。行政はこれを心配することだろう。
もちろん、私は目先の損得勘定で、この現象を放置しておいて良いとは思わない。その一方で、対策費が、対策をしなかったときに生じる損害額を大幅に上回るようでもいけない。
やはり私の場合は、この問題解決を、北海道教育委員会と同じ土俵では考えない。ここは別の次元から発想して、給食費を払わなくても済む制度を考えればいいのだ。
給食費を払わなくていいと言うのは、何も未納家族だけ払わなければいいということではない。全ての子どもたち、全ての家庭でその分、払わなくていいということだ。そこには金持ちも貧乏人もない。
この様な発想をすると、必ず「財源はどうする」という後ろ向きの議論が出てくるが、今回は子ども手当ての財源を例にして話ができるのでありがたい。月々26000円の子ども手当は、各家庭に渡すのではなく、地元自治体に渡す。ただし、無条件で渡すのではなく、小学校・中学校の給食費は、この中から負担して、児童・生徒からは直接徴収しないということにすればいいのである。
子ども手当てから給食費を引いて余った差額については、同じような「未納問題」を捜しだして、同じように対応すればよいのである。
とにかく、国民からは、極力税金以外で、お金を徴収しない。その代わり、お金を配ることもしない。お金の出入りが大きくなれば大きくなるほど、公務員の「影の仕事」は増え、無駄な経費も大きくなり、予算額だけが増え続けていくのである。
わかりやすい説明を試みて、3種類の事情を引き算によって表し、不等号に使って関係づけてみよう。
A-B=給付金のように家庭が受け取るお金-給食費のように出ていくお金
26000-5000<22000-1000<21000
一見間違っている不等式であるが、イメージとしてはこうなる。総体として動くお金の出入りを小さくした方が、「結局は財政として、国家や自治体の手元に残るお金は多くなりますよ」ということだ。なぜか。何度も言うように公務員による「影の仕事」を減らすことが出来るからだ。問題の対策を研究してレポートにする必要も無くなる。
もしこのような案が実現すれば、給食費の未納問題などは発生しない。未納に頭を悩ませて、教師やPTAが対策などを考え対応する必要も無い。つまり、このような目に見えにくい「影の仕事」を極力減らしていくこと。これが公務員の削減につながり、全体的な税金の負担も少なくしていくのである。
この発想を高速道路の無料化に応用して不等号を作ってみる。
A+B=車にかかる税金+高速道路料金
2000+1000 < 2900+100 < 3000
2000+1000=これは、今現在の週末における高速料金1000円が実現した社会である。
2900+100=これは、更に高速料金を下げて、1000円から100円にしたときの社会である。
3000=これは車にかかる経費を一切合切、3000円でまかない、高速道路の無料化を実現した社会である。
ただし、ここにおける、2000円、2900円、3000円という数字には意味はない。
一見すると等号で結ばれる数式を、「影の仕事」を加味して考えると、その都度、高速道路料金を徴収しない社会の方が、「国家や自治体の財政出動は少なくて済みますよ」という意味だ。
更に二者の関係だけを取り出して考察する。
2000+1000 < 2900+100
これは前者が2000円の税金を払い、高速道路の料金が1000円の社会。
後者が2900円の税金を払い、高速道路の料金を100円にした社会。
2900+100<3000
前者が2900円の税金を払い、高速道路の料金を100円にした社会。
後者が3000円の税金を払い、高速道路の料金を0円にした社会。
私がこれだけ高速道路の無料化を主張し続けていると、一見、良識派とも思える人は、私の主張に一定の理解を示しつつ、
「それならば、高速道路の料金を半額にしてしまえばいいんだよ。無料は良くない。少しでもお金を取らなければ」
この様に私の後方支援してくれるような主張をされる。背景にある気持ちはとてもありがたいのだが、どんなに低料金になったところで、低料金と無料化は、構造的な問題解決に向けての発想が全然違う。
http://www.t-ken.jp/diary/20091225
ここでも語っていることだが、どんなに低料金であろうとも、高速道路の出入り口で料金を取り続ける限り、そこには人が必要だし、ETCが必要になってくる。無料化の衝撃度は、その場から、人と機械と施設を排除できる点にある。この人・機械・施設、それぞれが税金の固まりである。
最初のテーマに戻ってみる。給食費の未納問題を例にして話をしてきた。小さな政府を作るためにはどうすればよいのか。まずは公務員の仕事を減らす。これを一義的に考えなければならない。必要最低限の仕事だけさせて、余計な仕事はさせない。そうすれば自ずと、公務員の数も減らすことができる。
だからこそ、税金は数多い項目で集めてはいけない。また税金を何回も数多く配らない。差し引きによる絶対額の大小ではなく、お金を集めるにしろ、配るにしろ、その頻度を少なくする。お金の出入りの頻度を少なくすることにこそ、公務員の仕事量を減らしていくことにつながるのだ。この点に注目して行政運営していく必要性を、今の私は強く感じている。
2010年03月19日