田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

陳情審査の進行に関する問題点

 4月15日(木)に福祉健康委員会の陳情審査があった。
 数ある陳情審査の中で私が注目したのは、第99号陳情だった。
「江戸川区立保育園民営化の中長期計画の公表を求める陳情」と題する陳情原文を冒頭から一部引用する。
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 平成19年度に始まった江戸川区立保育園の民営化は、明確な選定基準も明らかにされず、将来にわたる具体的な民営化計画も示されないままに進められています。民営化の進め方に関し、これまでも多くの保護者から不安や改善を求める声があがっています。しかしながら、保護者が安心できる丁寧な進め方にはいまだに至っていません。
 将来にわたる具体的な計画、明確な選定基準などが公表されていないため、区立保育園の利用者である保護者は、子どもたちが通っている保育園が「いつ途中で民営化されるか分からない」という先の見通しが立たない不安でいっぱいです。また、これから保育園を利用しようという家庭からも、「民営化の長期ビジョンが分からないため、保育園を選ぶのに困っている」という声があがっています。
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 私は執行部(役所の職員)に対して、陳情原文に書かれた記述が事実認識として正しいのかどうか、質問をしていた。
 その回答として出てきた文章が以下の通りである。
○陳情に対する反論
・区としては「区立保育園民営化の進め方」に沿って、保護者の意見を十分に聴きながら、丁寧に進めています。
 このように回答している。


 つまり説明をしたという事実はあったとしても、陳情者は「丁寧ではない進め方」といい、執行部は「丁寧に進めている」と言っている。
 つまりこのような事実認識が違うにも関わらず、陳情審査にあったっている委員の議員からすれば、どちらか一方を信じると言うこと以外、どちらが正しいことを言っているかは分からない。
 このように陳情審査にあったって、陳情者と執行部の利害が対立することは多々ある。利害が対立すれば、主張や認識が違ってくる。しかし、その事実確認に対して、委員会の委員である議員が事実を知る術はない。


 民事裁判をイメージしてもらえばわかりやすいのだが、民事裁判では常に原告と被告の弁護士が対峙して意見ができる。一方は意見できるのに、一方が意見を言えないと言うことはない。それぞれ十分な時間を取って、対等な立場で意見が言えることが保証されている。進行はそれぞれの同意の元に進められ、一方が一方を抑圧的に対応することはない。裁判では、双方が主張する意見や提出された証拠に対して吟味がされて、時には証人などもその場に呼んで審議が進められる。


 では、江戸川区議会における陳情審査において、どのような進められ方によって、陳情審査は行われているのだろうか。
 原告に相当する陳情者は、陳情を提案することができる。委員会の場では、陳情者によって書かれた陳情原文が読み上げられる。陳情者の権利はここまでだ。この後、陳情審査が始まるわけだが、陳情に関して何ら予備知識を持たない前提の委員が最初に行うことは、執行部に対する資料要求である。
 もちろん委員会は、一ヶ月に1回、何度も開かれるので、第1回目の審議では、陳情原文が読まれて、資料要求が出される程度で審議は終わる。2回目以降の審議で、様々な資料が執行部から提案されるわけだが、このように資料を提案する権利は、陳情者にはない。
 執行部から提出された資料に関しても、委員がそれの真偽がわかるはずもないのだが、陳情者から見て間違っていると思えるような資料に関して反論する権利が陳情者にはない。
 そもそも委員会の場において、権利として出席して座れるようなイスがない。執行部が陳情に対して、主体的に意見したり、委員に質問したりする権利(委員の発言をよりよく理解するための質問はある)はない。しかし、委員会の場に同席していれば、委員から求められた場合ならば、意見も言えるし、資料も提出できる。このように陳情者と執行部は、対等な立場ではないにも関わらず、利害対立の構図に立つことが実際に何度もある。


 議会における陳情審査とは、裁判並に公平性を期すべきである。それならば、執行部だけが常に委員会に出席しているのではなく、陳情者もまた権利として、その審議に同席できるような運営に改めるべきであると考える。
 権利であるからして、多忙な陳情者は出席を拒否することもできる。しかし、もっと切実に直接訴えたいという陳情者がいれば、その要求に従って、できる限り、陳情者が直接的に委員会内で発言できる機会を増やすべきであろう。


 細かいことかもしれないが、有権者による政治の現場への直接参加とは、このような1つ1つの事案を実現することで、少しずつ獲得されるべき権利だと思っている。政治参加の意識が高い有権者には、このような新しい陳情審査への提案に対して、是非賛同していただきたい。
 有権者の意見を議会に届ける政治家はもう古い。
 有権者が直接議会で話せるような政治を行うことこそが、新しい政治家に課せられた使命である。


2010年04月15日