二大政党制という概念に反対する
英総選挙まさかの三つどもえ 第3党・自民、支持率1位
2010年4月21日1時25分 asahi.comより
【ロンドン=土佐茂生】二大政党制がいよいよ終わるのか――。5月6日投開票の英国総選挙で、第3党の自由民主党が世論調査で労働党、保守党を抑え、1位に躍り出た。選挙戦のさなかに2大政党以外の党が支持率トップに立つのは極めて異例。単純小選挙区制のため、支持率がそのまま議席数に反映されるわけではないが、間違いなく三つどもえの混戦になった。
英国では民間機関がメディアと連携し、毎日世論調査を行っている。自民党が1位になったのは、18日付日曜紙メール・オン・サンデー(MOS)の世論調査。同党の32%に続いて、保守党が31%、労働党が28%となった。同紙は、自民党が選挙戦の調査で単独で支持率1位になるのは、かつて2大政党の一角を担った前身の自由党以来104年ぶりと報じた。
さらに、別の世論調査会社「YouGov」が18日に発表した調査でも、自民党は33%で、保守党(32%)と労働党(26%)を抜いた。その他の世論調査でも、12日の議会解散前は18~20%ぐらいだった同党支持率は先週後半から10ポイント前後跳ね上がっている。
きっかけは15日に行われた英国初の主要3政党党首によるテレビ討論だ。2大政党を「古い政治」と批判したクレッグ党首は、新たな選択肢の可能性を印象づけ、中継した民放局の世論調査で労働党のブラウン首相、保守党のキャメロン党首に圧勝。「誠実さ」「カリスマ性」「力強さ」で高く評価された。
ただ、現行の単純小選挙区制は2大政党に有利。しかも現在の選挙区割りは労働党に有利とされる。MOS紙の世論調査結果をもとに実際の選挙区ごとに勝敗を予測すると、定数650のうち、自民党は現有の63議席から倍増するものの121議席どまり。保守党は230議席。「漁夫の利」を得る形で、支持率3位の労働党が267議席でトップという形になる。
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日本の話では無い。遠くイギリスの話である。ただし、イギリスの話とはいえ、今の日本の選挙制度は、英米の小選挙区制を大いに参考にして導入された経過がある。将来の日本の選挙制度を占う意味でも、小選挙区制の歴史が古いイギリスが、今どうなっているかを知ることは大いに意味あることだと私は思う。
そのイギリスにおいて、これまで万年第3党だった自民党が世論調査で支持率1位となったそうだ。これは、これまで政権を担ってきた保守党と労働党に対する不信感が強くなった証拠であろう。
これこそ、まさに今の日本で起きている第三極ブームに現象がかぶる。
そもそも、いくら国政と言えども、私は人間の思考をAかBかという二者択一で選ばせる小選挙区制には反対だった。その思いは今でも変わらない。人間の思考は多様化している。それにも関わらず、政界だけ、単純な選択を有権者に求めるというのは、実態に即していない。もちろん、小党分裂のような自体がいいと言うわけではないが、それでも、3~5位の政党に集約されるような政治制度がいいのではないかと、私は前々から思っていた。
記事にあるようなイギリスの例を出すまでもなく、今の日本で第三極がブームになっている背景も、やはり私には、暗に小選挙区制という選挙制度に対する批判が含まれているのではないかと思っている。
民主党は小選挙区制によってできた政権党であるが、その背景には、「『反自民』の大義の下に、民主党に結集せよ」という傲慢さがそこにはあった。ただし、これは民主党に限った話では無く、かつての新進党にもあった傲慢さでもある。これは、小選挙区制という制度が、比較第2党に対して、「選挙に勝つ」という大義名分の元、現政権に批判的な第3党以下を第2党に従わせようとする制度的宿命だと言って良い。
しかし、どうだろうか。いかに現政権に対して批判的であったとしても、だからといって、批判勢力は無理矢理共闘しなければならないのだろうか。違う。批判勢力という立ち位置は一緒であっても、批判の中身は、党それぞれであって、一概に野党だからといって、それを政治力学で集約させるのは間違った対応である。
遅かれ早かれ、日本においても小選挙区制は、「政権交代」という大義を実現し、その歴史的役割を終えた後、改めて別の選挙制度への議論へと昇華されるべき課題であると私は考えている。
時代は、二大政党制から、比較的考え方が近い政党同士が連立を組むことを前提として内閣を作る二大勢力制へと移行していくのだ。
2010年04月28日