田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

青森県深浦町にてタバコ自販機の実態を聞く

 深浦町と言えば、禁煙運動に携わっている者からすると、とても有名な自治体である。全国にさきがけてタバコの自動販売機の設置を制限した町なのだ。その条例が、「深浦町自動販売機の適正な設置及び管理に関する条例」平成17年3月31日施行。
 2010年4月28日(水)10時から、私は深浦町へうかがい、行政視察は行われた。たった一人の議員による視察ということもあって、和やかな雰囲気の中、説明はざっくばらんに行われた。一方的に説明を聞くという形式ではなく、自販機以外の雑談も大いに語り合いながら話は進められた。聞くという時間は少なくなってしまうが、自分も発言しながらの、行政説明は実に楽しく行うことができる。

 深浦町役場まではレンタカーで行ったのだが、その間、役場近くの商店には、普通にタバコの自販機が置いてあった。
 不思議だと思いながら、説明を聞いていると、「自販機を屋外に設置してはならない」とは条例で書いてあるものの、実際には、一人暮らしの老人宅の前にある自販機のように、設置者の経済収入を大きく脅かすような件に関しては、撤去すると言うことにはならなかったようだ。それにもし、この条例に従わない者がいた場合の罰則とは、撤去していないという事実の公表であって、罰金などの対応はしてないとのこと。それに事実の公表も今までにしたことはないとのこと。やはり人口一万人の小さな町なので、住民間の対立要因はなるべく避けられているようだ。

 何でもそうだが、やはり現地へ行くと面白い話が聞ける。これまでの経験から言って、私はタバコの存在が自分たちの利益につながる企業にとっては、JTがそうであるように行政と先鋭的に対立するのかと思い込んでいた。
 しかし、実はそうではないとのこと。自販機の場合、当然、JTとは別に自販機メーカーがある。自販機メーカーからすれば、タバコなどは収益のごく一部の事業でしかない。もし深浦町に新規の自販機を設置したとなれば、条例違反の嫌疑をかけられるわけで、反社会的とも思われかねない行為が、企業イメージを悪くするのは企業としても望むことではない。そこで自販機メーカーは、深浦町には自販機を卸さなくなったとのことだ。
 では、深浦町の自販機は、どうやってやってくるか。まず一度、近隣の秋田県能代市で販売される。そこで使われた自販機を中古として、深浦町の店が購入することで、使っているというのだ。つまりメーカーは直接的には深浦町では商売はしていない、深浦町にある自販機は、あくまでもメーカーが知らないところでの取り引きによって存在している自販機であるという演出を望んだと言うことなのだ。
 新規出店はないにしても、自販機は機械である。何年か後には壊れる物であるから、これからも細々とこの様なルートにより深浦町にもたばこの自販機は入ってくるし、自販機の営業は続いていくのだろう。ただし、既得権を持った場所でも無い限り、新たに自販機を置くことはできないというのが、深浦町の実態のようだ。
 条例の主旨から言えば、酒類や有害図書などの自販機も含めた規制の対象なのであるが、ここでは、屋外のタバコ自販機に特化して、データを公表する。
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平成13年2月以前 27店(36台)の自販機あり。
平成13年3月     2店(2台)撤去
平成13年9月     6店(6台)撤去
平成17年3月     2店(3台)撤去
   計        10店(11台)撤去
結果、撤去しない店 17店(25台)


 旧岩崎村       9店(13台)の自販機あり。
平成17年4月     26店(38台) 岩崎村との合併により台数が増える。


平成19年10月                 タスポ導入
平成20年4月      4店(13台)撤去
平成21年8月      2店(3台)撤去


平成22年4月現在
撤去しない店      20店(22台)
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 自販機撤去における力学だけで言えば、条例が制定されたことよりも、タスポが導入されたことが大きかった。つまりタスポ導入により、設置者の経費負担が増え、それを設置者が嫌がって、自販機の撤去に応じた例があったという。同時にタスポは、使い勝手の悪さから、自販機の売り上げを減らしてしまった。これらの理由により、タスポによる自販機の導入を見送った例があったとのことだ。
 タスポ導入から平成20年4月までに13台の自販機が撤去されたという事実は、その推測を裏付ける証拠であろう。
 条例を額面通り受け取ると、深浦町ではタバコ自販機が1台も無いように町外の人間ならば思うだろう。実態は違うわけだが、条例の存在が新規出店や自販機の増設を許さなかったという実績は、十分評価に値する。


 治外法権のような江戸川区には関係ない話だが、近年、千代田区や神奈川県をはじめ、路上喫煙防止や室内禁煙などの条例が、全国各地にできている。
 しかし、この様な禁煙ブームとも言える状況でありながら、タバコ自販機の屋外設置を禁止している自治体は全国広しと言えども深浦町だけである。逆に深浦町には、路上喫煙防止などの条例はない。
 それでも、他の自治体が追従できないと言うことは、自販機の設置に制限を加える条例制定が、どれだけハードルが高いことなのかの証明とも言える。深浦町で自販機設置を制限できる条例ができた背景には、平沢町長(当時)の情熱があったからだろう。残念ながら、当の平沢町長(当時)はヘビースモーカーであり、肺がんで亡くなってしまったのだが、首長の情熱は、具体的に行政を動かすのである。


 余談になるが、去年の2009年は深浦町に入込客(=観光客)が相当増えたとのこと。人口一万人の町で、これまで年200万人だった観光客が、年700万人になったとのこと。何故こんなに増えたのか。自治体そのものに、特別な変化や理由が思い浮かばない。となれば、その理由は外部要因にあるという話になって、高速道路の土日1,000円化が大きかったのではないかと結論づけられた。確かに、2009年は、普段見ることがない、関西を中心とした県外ナンバーの車を深浦町でもよく見かけたという。
 ここでもまた高速道路の低料金化、および無料化が、(直接的に高速道路が通っていない地域であっても)日本の隅々まで活性化させる一助になっていることが証明された。
 昔から、高速道路の無料化を主張している私としては、「我が意を得たり」と自らの先見性に得意顔となり、東京へ帰ってきたわけである。


2010年04月29日