Googleは、現代の現人神か
グーグルはユーザーの頭の中まで知っている
--プライバシー保護運動家が警告
ボストンで開催されたカンファレンスで、プライバシー保護運動家が、グーグルが大量のデータを収集していることに対して警告を発した。
文:Ryan Naraine(Special to ZDNet.com)
翻訳校正:石橋啓一郎
2010年4月30日 07時00分 ZDNet Japanより
ボストン発--プライバシー保護運動家であるMoxie Marlinspike氏は、SOURCEカンファレンスの壇上で、Googleのデータ収集活動に対する注意を呼びかけ、この検索エンジン大手企業は、データマイニングによってウェブサーファーたちの考えていることすら調べることができると警告している。
プライバシーに対する脅威の変化について議論するプレゼンテーションの中で、Marlinspike氏はGoogleのデータ収集を、国防総省の全情報認知計画になぞらえ、「社会的物語からの離脱」なしには、Googleの触手から逃れることは不可能に近いという事実を嘆いた。
「Googleは恐ろしく多くのデータを持っている。彼らはすべてを記録する。あなたのIPアドレスも、検索リクエストも、送受信したすべての電子メールの中身も知っている。彼らはあなたの読むニュースも、行く場所も知っている。さらに、リアルタイムのGPS位置情報やDNSの問い合わせまでも収集している」とMarlinspike氏は言う。
さらに同氏は、「彼らはあなたの友人、あなたの住所、職場、自由時間に何処にいるかを知っている。また、健康についても、性生活についても、政治的な傾向についても知っている。彼らは、あなたが何を考えているかすら知っているのだ」と付け加え、Googleは同氏が「偽の匿名性」と呼ぶものを提供することにより、プライバシー規約をコントロールする方法を見つけたと警告した。
同氏は、ユーザーがプライバシー設定を管理するためのGoogleのツールによって、ウェブユーザーに明確に結びつく情報が収集できると指摘した。「そのツールを使うには、アカウントを持ち、サービスを使っている際にログインし、永続的なクッキーを使用する必要がある。彼らのやり方は賢い」と、Marlinspike氏は話した。
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この様なことは想像はしていたが、まだリアリティはなく、「いつかは地球に巨大隕石がやってくる」 位の認識しかなかった。
しかし、レポートを読み、普段の自分の生活を考えれば、Googleは正に「あなたの友人、あなたの住所、職場、自由時間に何処にいるかを知っている。また、健康についても、性生活についても、政治的な傾向についても知っている。Googleは、あなたが何を考えているかすら知っている」と、そうなってしまう。
これはとても恐ろしいことだ。今はまだGoogleが何か反社会的なことをしたという報告はない。しかし、どんなに優良な企業であろうとも、普段どんなにお世話になっている方であろうとも、どんなに親しい友人であろうとも、自分のキャッシュカードを預け、暗証番号まで教えるなどと言うことはしない。
人間が生きる上で、一番大事なモノを、他人にゆだねてしまう恐ろしさ、また「他人の大切なモノ」を第三者が持ってしまった場合、その第三者の胸先三寸で、それを所有したり、壊したり、移動したり、隠したり、別のモノに変えてしまうなど、何でもできる「真の実力」をGoogleは持とうとしている。
よくアメリカのSF映画では、国家をも動かす国際的な軍事企業などというものが登場して、暗躍し、それに主人公らが戦うなどと言うストーリーを見つけることができるが、これからは単なるSF話とも言い切れなくなってくる。
かつて図書館にコンピュータを導入するにあたって、コンピュータの存在が、利用者の思想チェックに使われるのではないかと危惧されたときがあった。コンピュータの便利さの前で、あまり大きな議論になることなく、沈静化してしまった。今回のGoogleに関する記事は、同じような問題が、規模を世界レベルにまで広げて、改めて議論の対象になることを気がつかせてくれた。
さて、この様な情報の一元的管理の危険性については、区議会議員として自らが置かれた立場からも、コメントしなければならない。小さな一自治体の関係者であれば、図書館での情報、役所の庁内LANを使ったとの情報など、プライバシーにも関わるような情報は山ほどある。職員が職務専念義務違反をしていないようにとの理由で、職場におけるネットでの操作は、一つ一つ役所内の誰かによって、記録され覗かれている。それが単に、職務以外のことをしているのでないかということだけを監視するのであれば、問題は少ないかも知れないが、そのような様々な情報が、情報を知る者を、個人的な対人関係の中で使われ簡単に優位者としてしまう場合なども予想される。この様なことについては、どのような対策をしているのだろうか。
図書館の民営化なども、基本的には賛成できる政策ではあるが、この様な利用者がもたらす様々な情報の扱いについては、慎重に対応し、その情報は、ある程度したら完全に破棄して、利用者のプライバシーに配慮しなければならない。民間を信用しないわけではないが、民間だからこそ、より一層、情報の取り扱いには注意しなければならない。
Googleは、とても便利であり、かつ優秀であり、私たちにとっても良き友人の一人であるが、やはりここまで大きくなると、その存在故に「危険視しなければならない」という発想を我々自身も持たなければならないだろう。
【注意:現人神(あらひとがみ)とは、「この世に人間の姿で現れた神」を意する言葉として使われます。昔の天皇、今のダライ・ラマが実際の現人神に該当します。想像や心の中にあるというのではなく、現代に誰もが目に見える形として、Googleは現存しています。私の記述の中では、Googleをあえて擬人化して表現しました。そこで全知全能のモノであっても、単に「神」ではなく、「現人神」として表現するに至り、深い理解を読者に求めました。】
2010年05月02日