弁護士の仕事はいくらでもある。ただお金にならないだけ。
弁護士も低所得時代に突入か
就職できない新人急増の背景
加藤 秀行、 簗瀬 七海 2010年08月22日 14:00 MONEYZINEより
日本弁護士連合会が今年6~7月に実施したアンケートによると、新司法試験に合格して司法修習を受けている弁護士希望者のうち、約43%の就職先が未定であることが分かった。
12月に修習が終わる予定の2021人のうち1235人が回答し、532人が内定していなかった。同時期の未定率は、08年では約20%、09年は約30%で、2年前の2倍以上にのぼり、就職難が加速していることが浮き彫りとなった。
政府による司法制度改革の一環で、法曹人口の増加と専門性化を目指し、法曹養成制度の改革が行われた。専門職大学院である法科大学院が2004年に設置され、2006年度からは新司法試験が導入されている。この新司法試験を受験するためには、法科大学院課程(法学未習者課程3年、既習者2年)を修了することが必須条件となる。
2006年に行われた第1回の新司法試験では、合格者は1009人だった。合格率は48.35%で、3%程度の合格率であった旧司法試験よりも数字上は大幅に競争が緩和された。2009年の第4回新司法試験は、合格者数2043名と2006年の倍近くに上っている。
しかし、弁護士の仕事は必ずしも増えていないのが現状だ。このため就職先が見つからず、低所得に悩む若手の弁護士が増加しているという。
この法科大学院にかかる学費は、国立大学では初年度に入学金28万2000円、授業料80万4000円の計108万6000円。私立大学については、当該大学出身者なら入学金が免除・半額のところもあり、入学金が0~30万円程度、授業料は、60万円~170万円となっている。これらを少なく見積もっても、2~3年間の学費だけで200万円以上となる。
司法試験に合格すると司法修習生と呼ばれ、公務員に準じた身分で1年間の修習を受けることになる。アルバイトは禁止されており、司法修習生の半数以上が法科大学院在学時に貸与制の奨学金などを活用しているという。
これまで司法修習生には、月額約20万円程度の給与(給費制)国から支払われてきた。しかし、今年の11月からは、希望者に月18万~28万円の生活資金を無利子で貸し出す「貸与制」に変わる。これらの経済的な負担の大きさから、今後法曹界を志望する若者が減るのではないか、との懸念も生まれている。
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弁護士受難の時代である。司法試験とは合格するのが難しい試験の代名詞だが、優秀な人材から徐々に弁護士を選択する者は減っていくだろう。
試験は難しい、報酬は少ない。それで誰がそのような試験にチャレンジしようというのだろうか。弁護士の質が低下していくことは、将来的に間違い無い。
その中でも刑事事件を担当する弁護士は、特に悲惨である。弁護士費用が払えない人に対する刑事弁護では、そのほとんどが低収入または持ち出しによる弁護だったりするのだから、現状においてもまともな弁護活動などできてはいない。
もし真剣にこの日本から冤罪を無くしていこうと考えれば、警察・検察改革だけでなく、刑事事件における弁護士の立場も保証しなければならないのだが、こちらの方は全く考慮されていない。
刑事被告人にとって、弁護士は最後の期待なわけだが、その人物が、このように冷遇されて、ご自身の生活さえおぼつかなければ、他人の弁護どころではないだろう。
この国には、留置場や拘置所に人が溢れるほど、弁護士を必要としている人たちがたくさんいる。しかし、そのほとんどの人たちは、お金に困って犯罪を犯した人たちであって、最初から弁護士費用など払えるわけもなく、まともな弁護活動を受けていない。
本来ならば、この様な人たちにこそ、弁護士は必要なのだ。弁護士としての仕事がないなどということは、決してない。
国選弁護制度はあるにはあるが、報酬が低すぎて、うまく機能しているとはとても言えない。「犯罪者に税金を使うな」という一部の世論の後押しもあって、現状はますます絶望的である。
推定無罪という思想が徹底していれば、逮捕されただけで犯罪者扱いなどできないはずなのだが、日本ではそのような教育がされてこなかった。
警察・検察が支配する国の思惑通りに動いている国家だと言っても過言ではあるまい。
この国の主権者は国民である。国民が、権力者の権力の源であり、国民が、不当な権力行使によって不利益を受けないように、選挙によって、「権力者だと思われている」政治家を選んでいるのである。
その政治家達が、警察・検察という権力装置に対して、全くの弱腰である。これで国民の日々の権利を守れると考えるのがおかしな話だ。
警察・検察に対抗できる数少ない手段としての弁護士が弱体化されれば、ますます逮捕しやすい、起訴しやすい、有罪としやすい、日本の司法は、暴走していくに違いないのである。
2010年08月23日