田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

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日刊田中けん

国民の消費行動を第三者機関が監視する

 今回の一般質問でも、他党から提案されたのだが、「治安を守るため」と称して、安易に町中にテレビカメラの導入を求める民意がある。もちろん、防犯などの意識から提案されているという趣旨は理解できるのだが、この手の情報とは、常に「目的外利用」される恐怖とセットで考えなければならない問題である。日本のような民主国家でさえ、そのような管理システムには要注意すべきなのだが、これが北朝鮮や中国のような独裁国家で行われたのであれば、簡単に国民の行動を逐一監視し、統制するための強力な道具になると言うことも同時に、我々国民は知らなければならない。
 警察・検察とて、国の体制が変わってしまえば、その牙を国民そのものに向けることは、昨今の冤罪事件が続き、検察の不祥事が発覚した事実からも証明済みだろう。


 つまり、国民には等しく、他人には知られたくないプライバシーが存在し、それを国家が全力で保護することが前提となって、民主国家は成立している。たとえそれが実態とは違うフィクション(理想的な民主国家であっても、常に批判的に国家を検証することが国民利益につながるのであれば、国家を監視し続ける国民の目を失ってはいけない)であっても、「プライバシーの保護」とは、決して国家が侵してはならない「崇高な建前」なのである。


 日本でも一時、国民総背番号制がよく議論されたことがあった。現在の日本には、基礎年金番号、健康保険被保険者番号、パスポートの番号、納税者番号、運転免許証番号、住民基本台帳カードなどの、擬似的な統一番号がある。どれも国民総背番号制に近い扱いになっているが、各行政機関が個別に番号をつけているため、国民の個人情報管理に関しては一元的管理体制にはなっていない。
 もちろん、これは合理的運営ではないが、不合理なシステム故に、それが関係者からプライバシーをある程度守れる安全装置になっているとも考えられる。個人情報の多元的な管理とは、少なくとも個人情報の全容を知ろうとすれば、独断では行えず、必ずそこには複数人の常識と照らし合わせた正当性がなければならないし、「簡単にできない」現在のようなシステムの方が、「国民にとっての保険」として機能した方が良い。合理性による経費削減分を、この保険料だと思えば安いものである。


 このような基本的立場も確認して本論に入る。


 私は国民の消費行動は、クレジットカード払いを原則として、その履歴は全て国家が厳重に管理してはどうかと提案する。もちろん、単にクレジットカード払いを奨励したところで、国民はそれを簡単には受け入れはしないだろう。だから、クレジットカード払いを選択した国民には、消費税を減免するなどの動機付けを与えるのだ。それならば国民は積極的にクレジットカードを使用するに違いない。


 国民の消費行動を把握する目的は、消費者保護と合理的な徴税にある。
 消費行動が完全に把握されれば、所得控除などは、仮に領収書を持たなくても、自動的に税務署が行ってくれるだろう。医療費控除も、社会保険料控除も、生命保険料控除も、寄付金控除も、面倒な手続きは相当簡素化されるに違いない。
 取引における何らかのトラブルが発生したときには、支払いを中断することが比較的容易になる可能性もある。
 また能動的に防犯を主目的とすることは、「目的外利用」にあたる可能性があるので適当ではないが、消費行動が明らかになれば、振り込め詐欺などの各種詐欺に対して、その支払いを一時停止したり、犯人を追及することも容易くなることだろう。


 あくまでもこれは消費者保護と徴税システムの中で活用されるべき制度であり、厳に慎むべきは警察への積極的な情報提供にある。もし必要最小限の情報を警察に提供するとしても、裁判所による許可の元、どのような情報を警察のどのような部署に提供したのかをしっかりと記録して、警察が勝手気ままにその情報を私的流用できないようなものにしておかないと、国民生活は守ることができない。


 あとどうしても、国家に把握されたくない消費行動があるとするならば、それは税金を払って、ニコニコ現金払いで対応すれば良い。プライバシーの一部を国家に情報提供する者は減税にする。プライバシーの保護を第一に考える国民には、より多くの税金を払ってもらう。このような選択肢を残しておくことも、一計であろう。


 私事ではあるが、私がこの様な発想をしたきっかけをお話しする。今回、とあるクレジットカードを使って、海外のホテルをインターネット予約したのだが、私はそれを途中でキャンセルした。それにも関わらず、先方からは利用実績はないが、予約をしたと言う事実を盾にe-mailで請求書を送ってきた。私は先方の会社に不安感をもった。
 しかし、相手は外国の企業である。クレジットカード番号も含め、最低限の個人情報は既に先方に伝えてある。つたない私の英語では自分の正当性を上手に話しきる自信はない。そこで取引の間に入ったクレジットカード会社を通じて、その不満を述べたところ、しばらくしてその訴えが認められて、私の支払いが免除となったのである。
 この経験から、取引に関しては、善良なる第三者機関が介在することによって、公正な取引が保証されると確信したのだ。


 これからはますますインターネットを介した取引が多くなっていくことだろう。その分だけ、顔が見えない間同士での詐欺やトラブルも増えてくるに違いない。当たり前のように海外との取引も増えていくに違いない。相手先の企業が常に善良で良心的な企業ばかりとは限らず、実は「ブラック企業」と呼ばれるような会社かもしれない。


 世の中にも思わぬ落とし穴がたくさん開いている。個人の用心も必要だが、そこに国家なり、信用が高い企業が介在することで、何よりも善良なる消費者が守られるような社会を構築したいものである。


2010年10月06日