田中けんWeb事務所

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日刊田中けん

高速道路無料化を断固支持する(その1)

政策コンテスト:2日目 高速無料化に否定的「国民支持少数」
 毎日新聞 2010年11月13日 東京朝刊より


 政府は12日、11年度予算の配分で各省が政策を競い合う「政策コンテスト」で、公開ヒアリング2日目の作業を行った。対象は「元気な日本復活特別枠」向けに要望した国土交通、防衛、厚生労働、経済産業の4省の事業。民主党マニフェスト(政権公約)で主要施策とされた「高速道路無料化」関連事業には「国民の支持が集まっていない」などの、厳しい指摘が相次いだ。一方、「在日米軍駐留経費負担」(思いやり予算、1859億円)については「この場の議論になじまない」(玄葉光一郎国家戦略担当相)として、内容に踏み込まなかった。


 「パブリックコメント(公募意見)で厳しい国民の声が明らかになった。慎重に判断すべきだ」。評価側の阿久津幸彦内閣府政務官は、国交省の「高速道路の原則無料化の社会実験」(要望額は750億円)の予算要求に対し、苦言を呈した。


 国交省は10年度から一部高速を無料化する社会実験に着手し、11年度には対象区間を拡大したい考え。しかし、9~10月に募集したパブリックコメントでは、高速での渋滞懸念などから「必要な事業と思わない」が82%に達した。池口修次副国交相は「実験した高速では交通量が2倍に増え、並行する一般道で渋滞が解消する効果があった」と訴えたが、評価側の理解は得られなかった。


 防衛省の事業で注目が集まったのが「思いやり予算」だ。安住淳副防衛相は「米国は大幅な予算増を求めている。米側の苦しい台所事情を勘案し、引き続いて維持することが日米同盟の証しだ」と強調した。


 思いやり予算は高度な外交問題のため、評価側も「日米交渉の結論を踏まえて対応すべきだ」(平野達男副内閣相)と明確な判断を示さなかった。【谷川貴史、坂口裕彦、高橋昌紀】
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 高速道路の無料化をしない問題点は主に3つある。


① 高速道路を無料化が合理的であることに対する無理解
② 国民的支持が少数を「行わない理由」にしている不当性
③ 政権政党である民主党のマニフェストに記載
④ 高速道路の問題は、無料化か否かではなく、建設推進か建設反対かだ。
 これらについて順次、解説する。


①高速道路の無料化は合理的である。


 高速道路料金のことを考えると「朝三暮四」ということわざを思い出す。


【朝三暮四】
 中国、春秋時代、宋の国に狙公と呼ばれる人がいて、猿をかわいがっており、また猿もそれに応えた。狙公がお金なくなってしまい猿達に与える餌を減らすことにした。それを猿達に『今日から朝の餌を減らす』と説いたところ猿達は激怒し狙公は『ならば夜から餌を減らす』と言ったところ猿達は皆ひれ伏して喜んだ。


 この様な故事から転じて、朝三暮四は、本質は変わらないのに、口先でうまくだます、又は、だまされることその愚かさのたとえを意味するようになった。


 なぜ日本国民は、「税金」には拒否反応を示し、「通行料金」には不満を言わず対価を支払うのだろうか。
 高速道路関係の借金総額は約40兆円と言われる。高速道路から、通行料金を取ろうが、無料で通行させようが、そう簡単にはなくならない。これからも延々と高速道路を作り続けていくことは問題だが、もう既にできあがってしまった高速道路を、仮に潰してしまったところで40兆円は返ってこない。
 つまり運営費よりも、建設費にコストがかかりすぎた高速道路は、一度できてしまうと、この借金は何をしてもなくならない。他の特殊法人のように、事業を止めることで、毎年いくらかの税金の無駄遣いがなくなるというものではない。建設されてしまったこと自体が、無駄遣いと言えば無駄遣いだった高速道路が、全国にはたくさんある。
 運営コストがそれほどかからずに利用できる社会資本があるならば、それを無料にして、より多くの国民に使ってもらうことこそが公共利益の増大に合致する。私が何度も「公共物の有効利用」を主張するのは、無料化が一番利用頻度を促進させるからだ。
 よく高速道路の無料化を主張すると、それならば「鉄道もバスも無料化すればいいじゃないか」という意見を聞く。それはランニングコストを全く無視した考え方だ。鉄道を走らせるには、電車が必要であり、鉄道を動かす運転手・車掌・駅員たちが必要となる。バスも同様だ。だからこそ、赤字鉄道に対しては、その赤字をこれ以上拡大しないためにも、廃線という決定がなされることもある。廃線にしてしまえば、電車を購入し、維持する必要が無いし、人件費が無くなる。赤字路線の廃止という決定は「交通権」という発想無しで言えば、合理的な考え方だ。
 一方で道路の場合は条件が違う。車は運転手が用意して、運転手も自分自身である。鉄道ではランニングコストとして考えられる部分はほぼすべて、運転手自身が負担している。もしコストがかかりすぎることで、車利用が不利だと思えば、運転手の意志で車に乗らないという選択肢もある。無論、公共交通の発達していない自然あふれる地方では、車無しでは生きていけない人たちもたくさんいる。それでも、自分自身の選択によって、自動車を調達し、好んで自らが運転手となっているのだ。車は既に生活必需品になっている。生活道路もまた、生活必需品になっているのだ。
 少し電車の話に戻ると、赤字路線だからと言って、いくら廃線にしても線路は残る。道路とは、鉄道で言えば、廃線にしてもまだ残る線路のようなもので、無くそうとしても無くならない。いや、無くす意味が無い。そのまま放っておいても、それほど維持費もかからないのが、道路そのものだからだ。だから、ここの道路は、通行料が極端に減ったからという理由で、廃道になったという話はまず聞かない。全ての事例を検証したわけではないので、廃道がゼロとは言わないが、道がある限り、いつか誰かがそこを通るわけであって、舗装がガタガタであろうが、草木が生えていようが、そこに道らしきものがあれば、人は歩けるし、車は通れるのだ。道路に何か人間が手を加えて保全しなければならないという必要性は、その道路の必要性と自然環境の厳しさが重なってこそ、工事という人の手が関わるのであって、そうでなければ、道路の維持費がほとんど必要ない場所など無数にある。


 高速道路に限らず、有料道路は、有料制を維持するためだけにコストがかかる。ETCや料金所などの施設費、徴収するための人件費。つまり、これらのコストは、有料制を維持するためだけに発生するコストであり、無料化してしまえば発生しないコストだ。そのため、有料制が続く限り、利用者は、必要以上に高いコストを支払わされている。
 もし有料道路によって、「利益を出そう」となれば、通行料金は限りなく高い方が望ましい。しかし、道路という公共財を使用しての利益追求は、同業他社が存在しない一社独占の事業であることから、利潤を最大化させるような試みに対する正当性がない。一社独占により、資本主義的な競争原理が期待できない通行料金の高値安定は逆に消費者の不利益になる。だからこそ、道路は行政が管理運営すべき対象であって、無料化が一番望ましい運営形態となる。
 仮に有料制を認めたとしても、道路にかかる経費の大半は、初期建設費であることから、建設費の償還をもって終了とすること、または期限を区切った有料化によって、惰性的に延々と料金を徴収し続けないことが望まれる。だからこそ、高速道路建設の初期においては、有料制を続けて良い期間が30年と決まっていたわけではないか。
 その30年という期間限定の有料制を、なし崩し的に永久有料化にしようとしているわけだが、では有料制は何のために続けていくのか。道路の建設費を償還してもなお、有料制を続けていくその正当性は何なのか。
 よく有料制によって、需要を抑え、高速道路の渋滞を防ぐという意見を耳にする。では、その続けてしまう有料制によって得たお金は、何に使うのか。単に渋滞を防ぐだけではなく、「儲かってしまうお金」は何に使うべきなのか、それを私は聞いたことがない。単に渋滞防止のためだけに有料制を認めるならば、それは永遠に有料制を続けた方がいいということになってしまう。そうではない。もし仮に渋滞緩和のために、有料制を認めるとしても、その通行料によって得たお金は、渋滞緩和のために、その道路のために使われることが正当性を持つのであって、それは渋滞解消となるほど、道路を拡幅した時点で、有料制を続けていくことの正当性が消滅する話なのだ。
 また道路の維持補修にお金がかかるから、有料制が必要だという意見がある。これは前述したように、道路とは廃線になっても残る線路のようなものだから、そもそもそれほどお金はかからない。でも、使っていれば維持補修は確かに必要だ。それならば、その僅かな費用は、有料制によって捻出するのではなく、色々な形で払われている車関係の税金から、その費用を捻出すればいい。今現在で言えば、1リットルのガソリンに対して、48.6円の揮発油税がかかっている。ガソリン全体に対して、二重課税なのだが、消費税がかかっているので、仮にガソリンが110円だとすれば、税金は、5.5円となる。48.6+5.5=54.1。つまり、1リットルのガソリンを購入すると、約55円の税金を、自動車利用には支払っていることになる。その車が1リットルあたり10㎞走る車だとすれば、一般道と言えども、1㎞あたり、5.5円の通行料を支払わなければならない有料道路だと考えることもできる。
 これだけ多額の税金を自動車利用者は支払っているのだから、その税金から、高速道路の維持補修費を捻出したらどうだろうか。少なくとも一般道はそのようにしている。何も高速道路と一般道を、このようにして分ける必要性は全くない。


2010年11月18日