田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
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日刊田中けん

能登を旅して感じる“おもてなしの心”

 最悪の体調のまま旅をした。能登に向かった。

 能登空港を降りて、ふるさとタクシーという相乗りタクシーに乗って、和倉温泉の旅館へ行った。まずロビーで目にしたのは、堂々とタバコを吸う客の姿とタバコの臭いだった。


私「ロビーではタバコが吸えるのですか」
宿「はい」
私「健康増進法、第25条をご存じですか。罰則規定は無いものの、公共の場所では禁煙、分煙は当たり前ですよ」
宿「はい。一応、吸える席と吸えない席による分煙はしているのですが」
私「ただ単に、吸える席と吸えない席を設けたと言うだけの分煙でしょう。分煙とは、四方を壁に囲って、そこ以外に副流煙が漏れないように配慮した完全分煙のことを言うのであって、あんな分煙を分煙だとは言えないことはわかりますか」
宿「はぁ~」
私「こちらのような能登の田舎の常識はよくわかりませんが、私のように東京から来た者にとっては信じられない光景ですよ。能登空港は羽田空港とだけつながっている空港ですよね。こんな経営していたら、東京から飛行機飛ばして、能登まで遊びにこようなんて客は、いなくなりますよ。それでもいいんですか」
宿「はい」
私「とにかく、現状でも違法状態ですから、早急に改善してください。私は旅好きで、全国結構旅していますが、こんなにおおっぴらにロビーで喫煙させている旅館は初めてです。とにかく不愉快でたまらない。それだけお伝えしておきます」


 そのテンションのまま部屋に入った。
 隣から、家族連れの声が聞こえてきた。明らかに小さな子どもの声も良く聞こえた。早速、フロントに電話をかけた。


私「今、案内してもらった部屋は音漏れが酷いですね。隣の家族連れの声がそのまま聞こえてきます。私は、そんな家族連れの声など聞きたくないし、逆に自分の声だって隣に聞かせたくない。もし今日が満室だというならば別ですが、空いているお部屋があるならば、隣が空き部屋になっている部屋に変えていただきたい。これでは安心して夜も眠れやしない」
 そう言って、3階の部屋から7階の部屋に変更してもらった。


 何処の宿に泊まるときもそうだが、初っぱなから、このぐらいうるさく注文するのが良い。うるさい客だと、宿には思わせておいた方が総じてサービスは良くなる。


×食べてください。
○お召し上がりください。
×ごめんなさい。
○申し訳ございません。
×とんでもございません。
○とんでもないことでございます。
×ごはんになります。(状態を表す言葉なのに、A→Bへの変化を示す“なります”は使ってはいけない)
○ごはんでございます。
×~ありますか?   ありません。(努力しないでの、即答による否定回答は禁止)
○~ありますか?   少々お待ちください。(一度奥に下がって)誠に申し訳ございませんが、現在、そちらの資料は持ち合わせておりません。
×~できますか?  できません。(同じく、努力無しでの即答による否定回答禁止)
○~できますか?  少々お待ちください。(一度奥に下がって)上司に確認したところ、そのようなことはできかねます。誠に申し訳ございません。


 このように敬語の使い方と客との応対を徹底的に見直して、従業員の教育をしないことには、これからの宿泊業界の中では生き残っていけない。


 2日目は、輪島温泉の名店を予約していた。
 輪島までは、特急バスで向かった。
 和倉温泉からは、日に3本しかない特急バスである。
 旅館の案内では、駅(大型バスターミナルのこと)に着いたら電話をしてくれとのことである。
 旅行案内所に聞いて、旅館の送迎バスを呼んでもらった。


 送迎バスが駅に着くまでの間、「近くに洋菓子屋は無いのか」と案内所の女性に聞いたら、伊藤さんという洋菓子屋と、駅前に吉野屋という洋菓子屋があるとのことだった。まず駅前の吉野屋に行ってみた。
 東京の洋菓子店を見慣れていると、どうしても品数の少なさに目を奪われてしまい、その場で何かを選ぶことが出来なかった。何か気に入らないことがあったわけではなかったが、もう一件の伊藤さんという店を見たかったこともあり、何も買わずに出てきた。
 バスが到着して、運転手に「伊藤さんという洋菓子店に連れて行ってください」そう尋ねたら、「伊藤という洋菓子屋はないですね。後藤ならばありますが」そう答えてきた。
 案内所では、伊藤と聞いたのに、あるのは後藤だという。こっちは地元の人間ではないので、運転手の誘導に従った。
 後藤洋菓子店という店に連れて行かれた。そこは町中の小さな店だった。一見して駅前の吉野屋の方が、大きな店で品揃えも豊富であることが店内に入ってわかった。仕方がない。そこで洋菓子を買ってホテルに向かった。


 ホテルの部屋でインターネットをして調べたら、伊藤さんという洋菓子屋は確かになかったが、「ロンシャンイトウ」という名の洋菓子屋があった。運転手はそれを知らずに、自分の知っている後藤洋菓子店へと客を誘導したのだろう。
 このような場合、運転手がすべきことは、宿に電話して、「伊藤さん」という洋菓子屋が輪島にあるかどうかを確認するとか、もう一度、旅行案内所で、伊藤さんという洋菓子屋がどこか確認すべきだったのだ。
 そのような労力を怠り、「伊藤はありませんが、後藤ならばあります」というように、自分の知識不足を棚に上げ、客の意向を尊重せず、店名を聞き違えた客のミスとして処理しようとしたところに、彼の接客業失格と言わざるを得ない汚点がある。
 後藤洋菓子店には何も落ち度はないが、私は単に“伊藤さん”という洋菓子屋に行きたかったのだ。


 さて、ホテルについてからのこと。部屋に入ると、テーブルの上には無造作に灰皿が置いてあった。フロントに電話をして、禁煙室有無の確認と、禁煙室が無いことが分かると灰皿の撤去と、延長コードの貸し出しを依頼した。客室係が来て全て対応してくれたとき、今日はこの他に部屋はないのかと尋ねた。通された部屋は確かに広いのだが、部屋の真ん中に柱があったり、段差があったりで、使い勝手が良くなかった。そこで、多少狭くても良いから、一体となっている部屋はないのかと尋ねた。
 あるというので、そこの部屋と取り替えてもらった。


 接客してもらうごとに、老女が相手してくれるわけだが、その話し方がとても気になる。普通に「~ですよ」という言い方をするのだ。その言い方はまるで、幼稚園児に対する先生のような話し方だ。
「こちらですよ」
「いいですよ」
「わかりましたよ」
「持ちますよ」
 気にならない人は気にならないのかもしれないが、一種、友達言葉のように聞こえる「~よ」という言い方を、東京のホテルでは、まず客に対して使うことはない。全て言い換えてみよう。
「こちらでございます」
「はい。結構です」
「かしこまりました」
「お持ちいたしましょうか」
 全て語尾に「よ」を使うことなく、変換可能な言葉である。
 やはり接客における敬語の使い方を、従業員に対して、もっと徹底して再教育すべきであろう。


 田舎には田舎独特の文化や対応があっても良いとは思うが、都会の客を求めるならば、それなりの洗練された対応が必要である。ホテルでの接客が当たり前のように感じている私としては、大型旅館でありながら、田舎くさい対応では、納得できない。客として満足できない。


 更に部屋にあったスリッパは、3足あった内の2足は、足が触れる中底部分が破けていた。こんな備品の管理は、日々しっかりチェックしていれば簡単に交換可能なはずなのだが、そのような労力を惜しんでいるのだろう。
 外の景色は海が見えてとても良いのだが、窓が汚れている。せっかくの景色がよく見えない。


 朝になって、朝食を食べていたら、8時半だというのに、ガチャガチャと片付ける大きな音がした。「失礼しました」の声がけもない。


 宿から駅への送迎時間が、8時、8時半、9時と3回あるという。チェックアウトが10時だというのに、その時間の送迎は無いのだ。


 チェックアウトするときに、
「済みませんが、何か書くものはありますか」
と尋ねて、ペンを借りた。
「紙もありますか」
と聞いて、紙も借りた。そして、
「これから、色々と気になった点を言いますので、メモしてください」
と、フロントの女性にペンとメモを手渡した。


「まず、送迎の時、『駅に着いたら、ご連絡ください』という対応でしたね。前日、和倉温泉に泊まりましたが、あちらでは各店の送迎車が、駅前で待機して『ようこそいらっしゃいました』と当たり前のように出迎えてくれましたよ。それがこちらでは、『駅に着いたら電話しろ』ですか。随分と対応が違うのですね。バスが駅に何本も到着するような駅ならばいざ知らず、和倉温泉から輪島に到着するバスは日にたった3本でしょう。しかも私は事前に予約をしている客ですよね。だいたい何時頃に駅に着くから、それに合わせて駅前でバスを待機させていようとか思いませんか。客に電話をさせるという、1アクションをなるべく少なくさせて客を迎えるという『おもてなしの心』が無いのではないですか。それに送迎の運転手は愛想がなかったばかりか、洋菓子屋の店も知らずに、こちらが希望した店とは別の店に案内されました。輪島のことを知らなすぎませんか。・・・・・・・・・・・・・(これまで表記したクレームをほぼ全て伝えた)・・・・・・・」


 フロントの女性の顔が引きつっていることが分かった。そこから読み取れる内なる言葉は、「申し訳ない」という謝罪の気持ちではなく、「嫌な客に説教されて困ったな」という不快感ありありの顔つきなのだ。
 このようなクレーム対応において、不快感が顔に出るような従業員ではダメなのだ。今考えれば、フロントの女性従業員ではなく、責任者を呼んで言えば良かったかもしれないと、我ながら後悔した。


 このような場合、どうしても前泊したホテルと比較してしまう。そうなると前泊したホテルが、至らない面はあったにせよ、『また泊まってみたい』と思わせてくれるホテルだったと改めて思った。どんなに厳しいことを言っても、14時30分という、通常では対応外の時間であっても、特別の送迎車を使って、もちろん無料で、わざわざ駅まで送ってくれたのだ。それが、今回のホテルでは10時のチェックアウトにも関わらず、『タクシーで勝手に移動しろ』なのである。
 ちなみに、前泊のホテルの料金は9000円。今回のホテルの料金は12000円。料金が高いのにサービスが劣るとはどういうことなのか。


 申し訳ないが、この輪島の旅館に関しては、私が再び宿泊することは無い。最後に語った数々のクレームが、私がその店にできる最初で最後のサービスとなってしまった。


2010年12月28日