田中けんWeb事務所

江戸川区議会議員を5期18年経験
巨大既存権益組織に斬り込みます!

t_ken

日刊田中けん

被災者に語る言葉は、「頑張れ!」じゃない。

《ネットで見つけた被災者の言葉より》


おまえ、ちゃんと分かってるの?


超つらいとき、「とりあえず帰りたい、もう帰りたい」っていう、


あの帰る家がね、全部流されたんだよ。


俺、もう、家ないの。


明日も頑張ろう!って決意するような場所がね、ないわけ。


今日も疲れた―!ってドア開けてホッとするような所がね、


全員、一瞬にして、心の準備もなく、いきなり11日から消えたわけ。


おまえ、家ないのに頑張れる?


服も漫画も、化粧道具も、アルバムも、大事にしてたもんも、全部いっきに無い。


よし、頑張ろう!って思える?


すげぇ言われてるんだけど、CMとかで、頑張れ頑張れとか。


ちょっと気を許すと、「一緒に頑張ろう!1人じゃない!」とか言うわけ。


いや、おまえら家あるじゃん?そのCM撮ったら家帰ってるじゃんって。


仕事もあるじゃんって。


おれ、船、なくなったんだぞって。


多分、漁師はもうできないと思ってる。


もう、なーーーんもない。


どう考えたら、今、頑張れるんだよ。


ちょっとでも頑張れる何かが、今、俺たちにあるのか?


「いや、今はこっちで頑張るから、おまえらは1年ハワイでゆっくりしてきな」


とか言われたい。


「おまえらが帰ってくるまでに片づけとくから。家も建てとくから」


とか言われたい。そしたら、俺だって頑張るよ。


毎晩、うなされるし、夜いつまでも眠れない。


流された人を何人も見た。


顔見知りも流された。


その頭にある映像を何回も思い出す。


そのたび、津波がこうくるって分かってたら、あの人を助けられたかも、とか。


時間が戻せたら、隣のおばあちゃんちに寄ってあげたかった、とか。


1人でも助けて英雄みたくなったら、まだやる気が起きたかな、とか。


俺、1人で逃げてきたわけ。


誰も助けなかった。おばちゃんとか、何人も追い抜いて逃げた。重そうなもの持ってる人とかもいたのに。


もう100万回くらい、100通りくらい後悔している。


4日目にやっと町に行っていいと言われて、


どっから手をつけていいかわからないどころか、


いっそもう何もしたくなくなるような町だった場所を見て、


ここを復興だなんて、微塵も思えない。今も。


蓋をしたい。見たくない。


町を見ると、死にたくなる。


自分の人生は、もう終わったなって思うよ。


こっからは、もう、どう頑張っても金持ちにもなれないだろうし、


家だって、もう、二度と持てる気がしない。


何も希望なんかないよ。


そんな俺たちがさ、避難所で、CMでアイドルや俳優を見てさ、


「一緒だよ、1人じゃない」とか言われるたびに、


ああ、あの世界は自分たちとは、もう全然違ってしまったんだと思う。


家がある人の言葉だなーと。安定してるなーと。


そんなCMとかして充実もしてんだろうなーと。


家が流されてなくてさ、帰る場所があって、仕事があって、


地に足が付いてる人が、すげぇ神妙な顔で、お洒落な服で、こっち見て何か言ってるな、と。


おまえに言われたくないと。ほんとに。何も言わないでほしい。


大丈夫なわけがない。


おまえらに大丈夫だよ、とか言われても、大丈夫なわけがない。


どう見たら、この状況が大丈夫になるのか、胸倉つかんで聞いてやりたい。


でも、怒る元気もない。やる気もない。


ボランティアや取材のやつらも来て、色々写真とか撮って、


「実際みると、テレビとかとは全然違いますね」とか言ってて、


数日たったら「元気出して頑張って!」とか言って、


自分たちの家に帰っていく。


正直、復興なんてクソ喰らえだと思うよ。


 


「何か、できることある?」


何を言っていいかわかんなくなって、兄に泣きながら聞いたら、


「正直、不幸になってくれたら嬉しい」


と言われた。


「俺たちを幸せになんてふざけたこと思わないで、


 俺たちの分、そっちもみんな不幸になってくれたらなー」


と言われた。


「俺たちを想って歌とか作られても今は不愉快だから、


 東京も全部流されて、それでも「頑張ろう」って言われたら、


 頑張るよ。その人の歌なら聴く。


 知らないやつに、馬鹿みたいに「頑張って」とか「大丈夫」とか言われると、


 今は正直、消えてほしくなるよ。


 募金は嬉しいよ。で、ボランティアじゃなくて、ビジネスで、仕事として、


 町を復興に来てくれた方が、こっちも気兼ねなく色々頼めて気が楽。


 正直、ボランティアに「ありがとう」とか言うのも苦痛。」
-------------------------------
「貧すれば鈍する」
 貧乏になると、生活苦から精神までおかしくなって、愚か者となること。


 人は誰も精神君主じゃない。それは被災者も同じ事。特に上記の人のように、自宅も含め、何もかもなくしてしまった人にしてみれば、「みんな不幸になって欲しい」と願うのが本音だろう。
 生活苦は、それほどまでに精神をゆがめてしまい、本人をひねくれ者に変えてしまう。それでも、現実の過酷さから、今はどんな忠告も、どんな助言も、素直に本人の耳には入らないだろう。
 他人の不幸を心から願うのは、正に自分自身が不幸のどん底だから。
 これもまた人間というよりは、日本人の本性なのではなかろうか。


 そう考えると、被災者に対して気軽に「頑張れ!」とは言えない。
 障害者や病気や怪我に苦しむ人に対しても、気軽に「頑張れ!」とは言えない。人の感受性はそれぞれだから、他人から見てたいしたことが無いようなことであっても、本人からすれば重大な精神的ショックを感じていることだって、たくさんある。
 失業や失恋、はたまたゲーム機を壊されたからと言って、家族に暴力を振るった子どもの実例も過去にはある。


 もう「頑張れ!」とは言えない。でも、私は常にあなたのことを思っています。そんな意志が相手に充分伝われば、それは言葉に出さなくても、変に曲解されるような言葉にしなくても、伝わればそれでいい。


 貧して、鈍した者は「患者」だと思い、どんなにひねくれ者になってしまったとしても、それをそのまま受け止められるような広い心が必要になってくる。
 世の中には、語らない優しい言葉も、きっとあるのだ。


2011年04月25日