町中よりも、取調室の中にこそ、監視カメラの設置を。
取り調べ可視化法整備に向け諮問 法相
2011年5月20日16時34分 asahi.comより
大阪地検特捜部の不祥事を受け、江田五月法相は20日の閣議後の会見で、捜査・公判の見直しや取り調べの録音・録画(可視化)など、刑事司法の新しいあり方について法相の諮問機関「法制審議会」に諮問したことを明らかにした。
諮問は18日付。可視化のほか、取り調べへの弁護人の立ち会い、検察の手持ち証拠の弁護人への全面開示などの法制化を検討する。6月6日の法制審総会で議論が始まる予定で、法曹三者以外の有識者を交えた部会が設置される見通しだ。
「検察の在り方検討会議」が3月にまとめた提言を受けたもの。提言では、供述調書に頼りすぎた従来の捜査・公判を見直すために「新たな検討の場」を設けるべきだとしていた。見直しには刑事訴訟法などの改正が必要となるため、法相の公的な諮問機関である法制審議会で検討することにした。
-------------------------------
よく犯罪防止のために、町中に多くのカメラを設置せよと言う政治的主張がある。このような町中のカメラ設置については、それだけで充分、設置の是非に関しても議論の対象となる。
私はどちらかというと、防犯を大義名分とした「カメラ監視社会」の実現を是とはしていない。つまりプライバシーを警察権力に簡単に渡してしまう今の社会情勢が、むしろ市民社会を脅かすのではないかと思うからだ。
仮にカメラ設置による「監視社会」を是だとしても、今の私が確実に言えるのは、優先順位としては、町中にカメラを設置するよりも先に、取調室の中にカメラを設置せよということだ。
それも防犯のために。警察、検察という権力犯罪を防ぐために、今すぐにでも設置せよと言う主張である。
しかも、取り調べの可視化は、全面可視化でなければならない。一部の可視化を持って、可視化とは言えない。事実上の編集ができてしまう可視化など、可視化していない現在よりも、より悪く可視化ビデオが運用されてしまう可能性を持つからだ。可視化とは、全面可視化のことだけを指し示し、部分可視化は可視化ではないとキッパリ言っておく。
また、可視化の対象は、被疑者だけでなく、参考人のような人物であっても、対象としなければならない。誘導尋問によって、参考人が、被疑者になったり、参考人が重要な証人になるケースもあるのだ。警察とのやり取りの過程で、どのような形で証言が発せられたのか、それを記録としてしっかりと残しておくことは、裁判を行う上でとても重要なことだろう。
大上段に構えて言うならば、民主主義の神髄とは、国民による権力のコントロールにある。では、権力とは何か。行政にはたくさんの権力がある中にあって、国家公認の暴力装置である、警察・検察の権力をコントロールすることは、政治家にとって、極めて重要な使命の一つだと言わなければならない。
取り調べの可視化、大いに結構ではあるが、くれぐれも警察・検察の介入によって、実質的な骨抜きや改悪的運用をされないように、注意しながら法整備を進めなければならないと強く主張する。
2011年05月24日