化物語第12話を見て。~人はそれを言葉にできない。
アニメ化物語(ばけものがたり)第12話「つばさキャット 其ノ貮」での話。神回とも言うべき感動的なお話し。
戦場ヶ原ひたぎ(せんじょうがはら-)との初デート。主人公の阿良々木暦(あららぎこよみ)は緊張していた。ドライブデートだったのだが、車の運転手は、戦場ヶ原ひたぎの父親だった。阿良々木暦にとっては、拷問のようなデートだった。後部座席に座った二人が話しを始める。
さて、私が注目した会話は以下の通り。
「ねっ、阿良々木君、私のこと好き?」
「は?」
「答えてよ。私のこと好き?」
動揺する阿良々木暦。
「何よ。答えてくれないの? まさか阿良々木君、私のこと好きじゃないのかしら」
「すっ、好きです」
「そっ、私も好きよ。阿良々木君のこと」
「どうも、、、ありがとう」
「いえいえ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「阿良々木君、本当に静かね。とても口数が少ないわ。いつもはもっとおしゃべりしてくれるのに。今日は機嫌が悪いのかしら?」
「機嫌がどうとかじゃなくてなぁ・・・・」
「あー、頭が悪いのね」
「混乱に乗じて、言いたいだけのことを言ったなぁ!」
「ふっ、阿良々木君は、突っ込みだけは、いつだってわんぱくなのね。じゃー、親切にも私から話を振ってあげます。阿良々木君は、それに答えてくれればいいわ。」
「うーん」
「私のどういうところが好き?」
「好きじゃないところはハッキリしているよ。くそっー本当に楽しみにしていたのに。夢がかなった位の気持ちでいたのに」
・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・
「おまえは、僕のどういうところが好きなんだ?」
「優しいところ。可愛いところ。私が困っている時には、いつだって助けに駆けつけてくれる、王子様みたいなところ」
「僕が悪かった」
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阿良々木は、こよみから、「私のこと好き?」と尋ねられて即答できなかった。「どういうところが好き?」と尋ねられても、「好きじゃないところはハッキリしている」と茶化して、答えられなかった。
しかし、こよみは違った。阿良々木の質問に対して、ハッキリ即答した。「優しいところ。可愛いところ。王子様みたいなところ」
何でもそうだが、即答できると言うことは、それを常に考えているという証拠だ。常日頃から考えていないと、人はそれを口にできない。
最後に阿良々木が、こよみに対して「僕が悪かった」と謝ったのは、自分は日頃、それほど真剣に、「こよみのどんなところが好きか」なんて考えていなかったからだ。それに比べて、こよみがどれだけ真剣に、自分のことを好きになっているか、思い知らされたからだろう。
そう。ここで重要なのは、文章の中身ではない。即座に反応できる時間の短さである。残念ながら、紙に書いた文章では、時間の重要さが、旨く表現できない。
試しに政治家に対して、「あなたの政策は何ですか」とか、「あなたの政治理念は何ですか」とか、単純な質問や抽象的な質問をぶつけてみると良い。
どのような答えが返ってくるとしても、それが即答であれば、その人は、常日頃から、その問題について考えていると思って間違い無い。主義主張の違いを超えて評価できる。
しかし、即答で返って来なければ、どんなに素晴らしい言葉であっても、それは、内製化して血肉となった言葉ではなかろう。また、訳がわからないことを、難しく言って取り繕うとした場合も同様に、それは常日頃から考えていない証拠だ。
もし私が同じように問われたらとしたら何と答えるか。
Q:「あなたの政策は何ですか」
A:「禁煙・人口過密の解消・交通問題」
Q:「あなたの政治理念は何ですか」
A:「少数者でも生きてゆける社会の実現」
即答が重要だと語っておきながら、それを紙面で答えるという、ちょっと卑怯な手を私は使いました。卑怯であれ、何であれ、常日頃から考えていないと、人はそれを言葉にできない。
ちなみに、「政治理念」をググって見ると、
「仙石由人政治理念」が、一番上に来る。
そこに書いてあることは単純明快だ。
「地球市民として自由で平和で健全な世界を創ろう!」
素晴らしい。小学生でもわかるような文章が良い。何よりも短文であることが良い。
短文でなければ、内製化できないし、人から尋ねられたとき、それをわかりやすく相手に伝えられない。難しい言葉はいらない。それは質問を煙に巻きたいだけの演出なのだから。
日本の政治家の中で、この様な質問をされて、2秒以内に話し始めて、10秒以内に答え終える人が、はたして何人いるだろうか。
化物語第12話。それは戦場ヶ原ひたぎの魅力が、ハッキリわかったお話しだった。
2011年10月20日